かんむり

どうしようもなく別々の体を生きる、夫婦の物語。

虎治と光は元同級生。夫婦になり子供を持ち家族になった。言葉と体と時間を重ね、時にぶつかりながら同じ方向を見て進んでいると、それが夫婦だと思っていた、けれど。子育てへの意識の違い、自分の体への戸惑い、老い、子離れ。こんなはずじゃなかった――私の“かんむり”は一体どこにあるのか。

「本著の表題である「かんむり」とは、水面に触れた雫が生む一瞬のきらめきのことだ。そのかたちは壊れやすく、二度と同じものは現れない。しかし美しく、完成されたものとしてあることを意味している。

　私たち自身もまた、そうした存在なのだと受けとめられたとき、生きることは少しだけ軽やかになるのだろう。光が私の思いを代弁してくれたように、彩瀬まるさんの言葉はこれからも、私の中に静かな波紋を広げ続けるに違いない。」

藤崎彩織（作家・ミュージシャン）――解説より抜粋

人生の「かんむり」を探す話であり、夫の体が大好きな妻の話であり、長い長い夫婦の対話の話でもあります。――彩瀬まる