アリの巣をめぐる冒険 昆虫分類学の果てなき世界

アリの巣をめぐる冒険 昆虫分類学の果てなき世界
アリの巣をめぐる冒険 昆虫分類学の果てなき世界
定価1,144円(本体1,040円+税)
発売日:
※価格、発売日は紙書籍のものです。
  • 発行形態 :新書
  • ページ数:296ページ
  • ISBN:9784344987289
  • Cコード:0295
  • 判型:新書判
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作品紹介

アリに乗る! 餌をねだる!! アリを食べる!!!
アリの巣の居候、キミらは一体何者だ?


アリの行列をじっと眺めていると、アリ以外の生き物が何食わぬ顔で混じっていることがある。
アリの巣にはさまざまな昆虫が居候しているのだ。
そんな好蟻性昆虫に魅せられて、昆虫分類学の見地から研究を続ける著者。
居候たちの正体とは? どんな目的で棲んでいる? アリはなぜ居候を追い払わないのか?
そこには驚くほど多様な、虫たちの生存戦略があった。
まだ誰も見たことのないすごい虫を見つけたい――
世界中の森の地面に這いつくばって挑んだ汗と忍耐と興奮の冒険を、若き昆虫学者が綴った名著の新装版。

●新種を見つけたら、どこにどうやって発表するのか
●100年前の昆虫標本(体長数ミリ)をお湯でもどして解剖
●命名は慎重に。一度つけた学名は変更できない
●珍奇な姿で大人気のツノゼミもアリと共生
●虫探しの道中でヒトの遺体まで発見
●狙いの虫を採る過程は推理小説に似ている
●「かっこいい研究」とはどういうものか など

新書版まえがき

 本書の原著は、東海大学出版会(現在は東海大学出版部)の「フィールドの生物学」シリーズの一冊として、「未踏の調査地は足下に」の副題をつけて、2012年に初版が出版されたものである。

 それから12年がたち、私も50歳を迎える。人生の折り返し地点もとうにすぎ、研究者としては残すところ十数年、長くてせいぜい20年だろう。記憶力も衰え、研究の終わりを意識する年齢となった。

 今回、東海大学出版部と幻冬舎のご厚意により、原著を新書版として出版できる機会に恵まれた。読み返すと何とも恥ずかしい部分もあるのだが、こんなに元気だったのかという感慨深さもある。当時より多少とも視野は広がり、優秀な学生たちに鍛えられて、研究をもっと楽しめるようになったが、視野ならぬ視力は衰え、何より体力は落ちた。

 また、研究をとりまく状況も変わった。私が学生だったころは、論文数や研究費の面で、日本の研究が活発な時代のピークだったそうだ。それが現在では、大学や博物館など、研究施設の予算は軒並み削られ、教授たちは雑用に振り回され、研究もままならないという状況に変わった。もちろん、それによって日本の研究力が目も当てられないほど下がったのは各種報道にあるとおりである。

 また、昆虫に関しては、さまざまな法規制が増え、たとえば沖縄県や鹿児島県の島々(南西諸島)では、多くは科学的に根拠のない規制により、まともに調査さえできなくなりつつある。

 外国でも、熱帯雨林を擁する東南アジアや中南米諸国では、生物資源に対する権利(生物由来の薬品開発の可能性など、生物の持つ価値)に関連し、昆虫採集そのものや国外への持ち出し、さらには研究さえも難しくなりつつある。そこへきて気候変動や農薬の使用、過剰な開発などにより、世界的に昆虫が減少し、せっかく採集に行っても、わずかな数しか見つからないことも多くなった。決して大げさではなく、充分な調査研究ができぬまま、多くの昆虫が人知れず絶滅に向かっているという恐ろしい状況にある。

 しかしそれでも、まだまだ研究には夢が残っていると私は思う。とにかく昆虫(もちろん、ほかの生きものも)はわからないことだらけで、わくわくするような発見が無限にある。実際、学生たちは目を輝かせて研究をしているし、私自身、とても楽しい研究生活を送っていることには変わりない。昔がよかったという点は間違いなくあるが、今さらそれを嘆いても仕方ない。

 情報にあふれ、研究技術が発達した今だからこそできることもたくさんある。制約のなかで可能なことだけでも、楽しいことはいっぱいあるのだ。そして何より、私たちがおこなっている研究は、失われつつある生物多様性への理解という点で、どんな些細な記録であっても、ますますその重要性が高まっている。

 本書は分類学という一基礎研究における、若手研究者の記録である。
 12年前に原著を書いた時には、読者として後進の若者を意識した。それはもちろんそのままとして、読み返して今思うのは、何かと暗い話題が多い昨今、楽しそうな研究者を傍から見て、それを面白がってくれる人がいたらという気持ちである。

 当時の表現はできるだけそのままにしたが、原著で内容がわかりにくい部分は適宜補足あるいは訂正した。研究成果がその後出たものについては、必要に応じて新書版注を加え、本書の最後でも近況を紹介している。個人名や所属に関しては、人によっては立場も変わった場合もあり、近年の個人情報に関する扱いも尊重しつつ、一部変更あるいは削除した。また、12年という歳月の間、交流のあった著名研究者のなかには亡くなった方もおり、没年を追加した。

目次

新書版まえがき
まえがき

第1章 好蟻性昆虫学ことはじめ 

アリクイエンマムシの発見
アリクイエンマムシの発見
ハネカクシの世界の門を叩く
好蟻性昆虫の分類学アリの巣をめぐって、名もなき虫を見つける
分類学の研究をはじめる
〈コラム〉分類学は科学かという議論
旧北区のクサアリハネカクシ
好蟻性昆虫からアリへ

第2章 アリの行列の百鬼夜行

新属、また新属 
〈コラム〉属ってなんだろう 
ヒメサスライアリを探せ 
歩道の掃除から 
〈コラム〉痛い虫、いやな虫 
軍隊アリ化現象 
〈コラム〉ワズマン型擬態 
ランビル国立公園のハネカクシ
〈コラム〉よいこの標本作製 
何もかもが未知だったタイ 
〈コラム〉ついでになんでも採って喜ぶ 
マレー半島の決着 
〈コラム〉採集の神器 
グンタイアリを求めて 
〈コラム〉採集時の服装

第3章 研究の枝葉を伸ばす

日本のアリスアブ相 
アリヅカコオロギと小松君 
愛しきヒゲブトオサムシ 
〈コラム〉最近の発見 1 
ツノゼミへの興味 
シロアリの巣もめぐる 
〈コラム〉最近の発見 2 
マンマルコガネと熱帯の法則 
悩みを抱えて海岸へ
本当の生物多様性未踏の地はどこに 

第4章 冒険は続く

三つ子の魂と進路 
生き物漬け生活 
〈コラム〉びっくり3選 
〈コラム〉採集法の奥深さ 
虫と青春 
〈コラム〉在野研究者と職業研究者 
生き物の多様性のすばらしさを伝えたい

[新書版追記]アリの巣をめぐる その後の冒険

あれから12年 
その後の活動 
いくつかの研究成果 

新書版あとがき

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