Home書籍詳細: イマジナリー・ライフレポートVol.1 正義の味方(上) 三崎亜記インタビュー

三崎亜記 連載開始 記念インタビュー

作家はチャレンジしていく
スマホで本を読むことが、ごくふつうのことになるために

「スマホでニュースを読むことは、当たり前になりました。だれも、新聞で読むのと比べてどうだとか言わないですよね。でも、本については違う。スマホと紙の本での読み心地はいまだに比較対象になっています」

 2004年『となり町戦争』で第19回小説すばる新人賞を受賞して作家デビュー、クールな叙情をたたえたSF的設定、現実とは少し違った奇妙な世界で生きるひとたちの感情、関係性のリアリティを描いて多くの読者を魅了してきた三崎亜記。

「スマホで本を読むことが、ごくふつうのことになるために、作家はこれからチャレンジしていくのだと思います。その第一歩、日常的に本が読めるようになる第一歩としてこの企画に参加しました」

 10月某日、東京・渋谷ヒカリエのKDDIオフィスで行なわれた取材の席上で、「いま飛行機で福岡から到着したばかり」の作家は「スマホで小説を発表するからといって書く姿勢は変わらない、変えない」と語り始めた。

 ブックパスで連載される新作「イマジナリー・ライフレポート」は、「イマジナリー・ルポルタージュ」として発表された前作『玉磨き』(幻冬舎刊/auブックパス読み放題プランにも収録)の姉妹編にあたる連作短編である。

〈高橋と玉との間に、どのような「交流」があるかは、どう取材したところで実感としてつかめるはずもない。だが「磨き」という行為を通して、単なる人とモノ以上の結びつきがあることは確かなようだ。
「磨きのコツのようなものはあるんですか?」〉
(『玉磨き』表題作より引用)

『玉磨き』が、ルポライターである〈私〉が架空の失われゆく伝統産業や風習に迫っていくルポルタージュであるの対して、「イマジナリー・ライフレポート」シリーズは、その職業に従事する「ひと」にフォーカスしていく作品になるという。
「評価の定まったひとを、別の視点から見てみたい。意図していなかった状況になっている状況……「ドミノ倒し」は誰でも知ってるけど、あの駒をつかう本来 のゲームの遊び方を知っているひとも遊ぶひともほとんどいないじゃないですか。思ってもみなかったふうに知られている。これを個人に置き換えてみたらどう なんだろう、本人はどんな思いで生きているのだろうというところを深く突き詰めていきます」

 配信一作目は「正義の味方」(上巻配信中)。岬の突端にある公園に立つ「正義の味方」の銅像。

〈せいぎのみかたって、なぁに?〉と問う子どもに、父親は〈「うーん、何だったかなあ、まあ銅像になるくらいだから、偉い人なんだよ、きっと」〉と曖昧に答えながら、台に刻まれた銘文を読む。

〈「遠い星から来て、この国を守るために戦ってくれた、とっても偉い人なんだって〉

 かつてこの国の「敵」と戦った彼への国民の評価は、意外な成り行きで期待から糾弾へと変わっていった。その経緯をもはや誰も覚えていない……。

 取材は続く。
「電子書籍については一切語るまいと決めてきました。何を語っても、20年、30年後には恥ずかしいことになる。明治時代に、鉄道が敷かれることに対して見当はずれに反対していたひとたちと同じことになるから」

 電子書籍について語る作家自身のことばが、作品そのものに重なってくる。いまある評価がこの先も同じとは限らない。それを歴史はさんざん証明してきた、だが、新しい刺激をうけると、ひとはその場かぎりの極端な結論を選びがちだ。

「悲しい場面で音楽を、海の場面で効果音をというような演出もできるだろうけど、スマホだからできますよ、紙とは違いますよという押し付けがましさはじつは敬遠されるのではないか。感度の高い消費者はじぶんで面白いものを探すでしょう」

「スマホで読むときに違和感を感じたとしても、それははじめて眼鏡をかけた時と同じ、使っていくうちに慣れていきます」

 スマホだからといって特別なことはしない。三崎亜記の静かな挑戦がいま始まる。

三崎亜記☓auブックパス☓幻冬舎の三社共同企画について

 auブックパスとは、130社以上の出版社の提供により、総計7000冊(300万円相当)※の電子書籍が月額590円で読み放題になるサービス。(※ Android向け 2013年10月現在) コミック、小説、実用書、ライトノベル、雑誌、写真集などオールジャンルの読み物を提供していることが特 徴。また、14万ファイルから一冊ごとに購入もできる。現在、Android、iPhone、iPadなどマルチデバイスで展開。昨年12月のサービス開 始以来、男女、年齢を問わない幅広いユーザーに支持され、好調に推移している。

 今回の、三崎亜記☓auブックパス☓幻冬舎の三社共同企画は、三崎亜記の新作「イマジナリー・ライフレポート」シリーズをauブックパス毎月配信すると いう初めての試み(全6話。3話目からブックパス独占配信)。同時に、本作の姉妹編で既刊『玉磨き』も読み放題プランに追加(表題作はauスマートパス会 員に無料で提供)。

「人気作家の魅力的な新作をスマホユーザーに提供することで、新しい読者を獲得するための新しいチャレンジとしたい」(幻冬舎常務執行役員・永島賞二)

「以前からauと幻冬舎は、新しいスタイルの10代限定小説新人賞「蒼き賞」などに共同で取り組んできた。800万人のauスマートパス会員にスマート フォンで小説を読む体験を提供し、ブックパスで良質な作品を配信することで、電子書籍をもっともっと楽しんでもらうきっかけにしてほしい」(KDDI auスマートパス推進部長・繁田光平)

KDDIと幻冬舎ががっちりとタッグを組むことで、スマホなどのマルチデバイス対応で、三崎亜記の最新作品をいち早く気軽に読むことが可能になる__。これまでにない新しい座組みでの本企画にぜひご注目ください。

ブックパスwith幻冬舎
http://www.bookpass.auone.jp/info/gentousya_fair/pc/index.html

(文・アライユキコ / 写真 隼田大輔)


三崎亜記(みさき・あき)
70年福岡県生まれ。2004年、『となり町 戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞し 作家デビュー。そのほかの著書に『バスジャック』『失われた町』『鼓笛隊の襲来』 『廃墟建築士』『コロヨシ!!』『逆回りの お散歩』がある。




イマジナリー・ライフレポート
遠い星からやってきて「正義の味方」と呼ばれた人物は、どのような経緯で国民の期待を失い、疎まれることになったのか。岬の公園に建つ「正義の味方」の銅 像をみつめる父子の会話から物語ははじまる(第1~2話「正義の味方」1話配信中)。好評の既刊『玉磨き』(幻冬舎刊/auブックパス読み放題プランにも 収録)の姉妹編となる連作短編の新作連載。